循環器内科
心不全

心不全とは

「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。」と定義されています。心臓は、いろいろな原因で正常な機能(血液を全身に送り出すポンプ機能)を発揮できなくなることがあります。
 
それらを総称して、“心臓が悪いため”に、と表現されています。心不全は、人生の「末期の病気」であると、漠然と考える方が多いと思われます。しかし心血管リスクが高まれば、どなたでも発症する可能性のある疾患です。現在、日本の心不全患者数は約100万人です。
 
加齢は心不全の大きなリスクになりますので、高齢化が進み、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)となる7年後には120万人に急増すると推計されています。心不全発症患者の増加に備え、「自分自身にも心不全を発症するリスクがある」との意識を形成し、予防意識を高めるために、心不全の啓発活動が必要とされています。

心不全になるとどうなる

心不全は、血液を送り出す能力の低下による症状と血液のうっ滞によって起こる症状が出現することが多いです。血液を送り出す能力の低下による症状は、心拍出量が減ったことが原因で、「疲れやすい」「だるい」「動悸がする」などが出現します。
 
血液のうっ滞によって起こる症状は、血液を送り出す能力が低下すると、心臓から前方へ血液が進みにくくなり、心臓の後方、血液を受け取る側で血液のうっ滞が起こります。
 
心不全の初期には、平地を歩く時にはなんともないのですが、坂道を上ったり、重いものを持ったりすると、息切れが激しくなります。心不全が進行してくると、あお向けになって寝るとセキが続いたり、息苦しく、体を少し起こすと楽になったりします。
 
さらに進行すると、息苦しくなって目が覚め、起坐位になっても症状の改善にしばらく時間がかかるようになります。この時、しばしば、ぜんそくのようにヒュウヒュウと音がします。これは、すぐにも入院治療が必要な重篤な状態です。

心不全の原因

血圧が高くなる病気(高血圧)、心臓の筋肉自体の病気 (心筋症)、心臓を養っている血管の病気 (心筋梗塞)、心臓の中には血液の流れを正常に保つ弁があります。
 
その弁が狭くなったり、 きっちり閉まらなくなったりする病気(弁膜症)、脈が乱れる病気 (不整脈)などが、心臓の機能低下を引き起こします。

心不全の予防方法

心不全の予防には、心臓が悪くならないようにする予防(一次予防)と、一旦、心不全を発症した人の再発予防(二次予防)の2 つがあります。
 
一次予防には、心臓の働きを悪くさせる要因を除くことが必要です。必要なら医療機関で治療を開始します。二次予防としては、必要な基礎心疾患の治療の継続とともに、過労や水分の過剰摂取を避けることが必要です。
 
また、冬には感染を契機に心不全の悪化が起こりますので、風邪やインフルエンザ予防も重要です。ご自宅での体重測定は、心不全の水分管理に対し特に有用ですので、是非行っていただきたいです。
 
また、高齢者の心不全では、軽度の労作が大きな負担になって、再発することもありますので、患者さん自身の自己管理、ご家族、あるいは医療・介護関係者、地域の対応が大切です。

心不全を未然に防ぐ一次予防

心不全の一次予防について具体的に記載します。一次予防では、生活習慣是正にかかわる事項が多く、それにより高血圧、糖尿病、脂質異常の改善が得られます。
 
肥満、塩分過多、喫煙や運動不足は、他の心疾患の引き金でもあり、心血管イベントリスクを高めますので、各要素の是正が必須です。これらの生活習慣に関連する是正すべき事項は、「わかっているけどやめられない」こともあるため、工夫が必要です。
 
血圧手帳や体重手帳の記載やスマートホンなどを利用した検診歴やデータの保存(健診データ、心電図データなどを写真として保存するなど。)するのもよいでしょう。
 
ご自身のデータ管理をすることで、心不全予防の意欲を持続することができます。体重管理では、適正体重を守るのが困難なら、1年後の自分の体重を2㎏減にするなどと具体的な目標を立てることです。
 
もしすでに、高血圧、糖尿病、脂質異常で治療中の場合は、体重測定重要性が増します。減塩では、一日食塩6g以下を目標にしますが、まずは食事に含まれる食塩の表に目を通してみるとか、専門家の栄養指導を受けていただく、禁煙では、禁煙外来を受診してみる(効果的な禁煙補助薬が使用可能)など、具体的行動を起こすことが大切です。
 
心不全リスク低減に寄与する事項について、簡単にできるものから対応していただくのがよいでしょう。

心不全のための運動療法

心不全の一次予防のための運動は、ガイドラインにも明記されています。積極的な運動は、心不全予防に大切です。アメリカ心臓病学会(2007年)は、中強度の好気的運動(例えば早歩き)を最小30分週5日もしくは、高強度好気的運動(例えばジョギング)の最小20分週3日が、心血管疾患リスクが低減できるとして推奨しています。
 
これは、18歳から65歳までの推奨ですが、現代の日本の70歳以上の方々には、この基準を満たす運動が可能な方が多いと思います。ガイドラインを目標に運動に取り組んでいただきたいと思います。
 
身体的な問題のある方は、主治医の先生との相談が必要と考えます。十分相談し、ご納得の上で、可能な限り活動性を上げていただく方向に、日常生活を調整される方向が良いと考えています。

心不全の二次予防

心不全の二次予防は心臓基礎疾患の治療を優先することになります。その上で日常生活の生活習慣の是正を行います。 内服治療は、基礎心疾患、併存疾患や重症度によりかなり違いがあります。
 
それでも多くのエビデンスにより治療法に大きな進歩があります。基本的に心不全のガイドラインにしたがった治療が行われます。

みたか内科循環器内科での対応

まず侵襲治療、手術が必要な方には早期に適切な専門施設への相談を行います。外来治療が可能な状態に改善すれば、十分な連携関係を構築して、いつでも当院での治療を再度再開するのも可能です。
 
ご本人のご希望も取り入れたうえで、ガイドラインに準じた治療の実践を行います。心不全は急性増悪と改善を繰り返す特性がある疾患群です。
 
繰り返す病勢の変動を十分に観察し、外来診療のみでは困難な場合、次の治療が必要かどうかの見極めを大切にします。患者さんご本人のみでなく、介護されるご家族も含めたご希望を入れた対処が可能です。